目的論とは
目的論は、『すべての人は、目的に向かって行動する。』とする考え方です。
すべての個体には目的があり、すべての身体的機能・精神的機能・状況に対する反応は、それぞれの目的,目標達成のために向けられています。
個人を構成する精神と肉体は、分け隔てなく協力し、目的と目標達成のために全力で奉仕するものです。アドラー心理学では、人は、何かしらの自分自身へのプラスの効果を求めて目標を達成に努力する生き物と考えています。
すべての言動・思考・意識・無意識は、目的と目標達成のための具体的な行動です。
高圧的な態度であったり、温和な態度、ユーモアのある行動もすべて本人の目的に沿った行動なのです。
つまり、個人がどのような目的を持つかで、性格や行動、表現や感情など周りから見れば「人格」ともいえるものが表出してくるのです。
人間は機械?【人間機械論】との違い
人間機械論とは、人間は、DNAで設計され、細胞で構成され、脳内の信号で行動する・・・
という、人間はあくまでもシステマチックに構成された、機械のような存在であるという考え方です。
人間機械論では、誰かを愛すること・好きな仕事に出会うこと・仕事に嫌気が差すこと・・・
これら人間的な感情や行動は、人間に組み込まれたシステムの強い影響を受けていると見なします。
アドラー心理学でも遺伝や生まれたときの身体的特徴、育った環境による影響は考慮していますが、アドラー心理学の目的論は、このような唯物論的な思想の反対側にあります。
アドラー心理学が前提としている目的論では、行動は全て本人の目的によって選択され決定されていると規定しています。
しかも、目的は変化・成長し続けることを前提としています。
目的論的な分析
- 一緒にランチをする
- ボディータッチをする
- 第三者の悪口をいう
- 相手の短所を指摘する
- 服装に気を使う
- 笑顔で挨拶する
- ぶっきらぼうな人間をよそおう
- 気の利いた一言を心がける
- まず己の体を鍛える
- 座る位置に気をつける etc...
これらは、ある人と仲良く関係になりたいという目的を達成するために、様々な人が取った行動の一例です。
同じような目的を達成するにも様々な選択肢があります。
あなたなら、どの行動が適切だと感じるでしょうか?
目的を達成するためには、手段は選ばない・・・?
- 転職をする
- 上司に待遇の改善を直訴する
- 悩み続ける
安定した生活を望むのでも、このように全く違う選択肢があります。
「悩み続ける自分がストレス」であっても、悩み続けることで変化せずに安定するという、短絡的だけど最も迅速な目的の達成方法を選んでいるということを認識することは重要な事です。
共同体感覚と併せて手段・方法を検証する
目的が「自分自身の安定を求める」であっても、人間関係を外して考えることはできません。
例えば、誰かの悪口を言って共感を得たとしても、<陰口を言うあなた>という社会からの評価は、「自分自身の安定を求める」という目的を達成する手助けになるものでしょうか?
詳しくは、『共同体感覚』に説明を譲ります。
目的論とは
アドラー心理学の目的論の意義
- 個人には、それぞれ自分自身へのプラスとなる目的があある
- 個人の行動は、目的,目標達成のために向けられている
- 目的に沿った行動でも無益な結果となることがある
- 共同体感覚と併せて考えることで、行動を正しく評価できる
- 目的を理解することでその個人をより深く理解できる