アドラー心理学にとって重要な概念の一つ【ライフタスク】について解説します。
人生で直面する課題3つを主に論じていて、近年は2つプラスして、ライフスタイルは5つあるとも言われています。
3つのライフタスクは
- 仕事
- 交友
- 愛
2つの近年プラスされつつあるライフタスクは
- 自己(セルフ)
- 精神世界(スピリチュアル)
です。
人によって、学生時代・社会人時代・結婚前後・子育て前後・老後などのライフステージ毎に重要性は違います。
それでも、社会的な動物である人間にとっては、常に向き合わざる負えない課題です。
ライフタスクへの対応が、ライフスタイル(人格や個性)を形成するとも言え、あなたがどのようにありたいか、人生の幸福度を左右する課題であると明確に断言できるでしょう。
必要な能力
正しくタスクに取り組むためには、【共同体感覚】が大切です。
共同体感覚とは、自分の与えられた状況(共同体や自分以外の人)に、どれくらい調和して自分を関係させることができるのかという能力です。
共同体感覚に優れていると、人とのコミュニケーションが円滑に取れるし、共同体の中に問題が起きたとしても、課題の解決に取り組みやすい環境を作れるでしょう。
※詳しくは、共同体感覚をごらんください。
仕事のタスク
仕事とは、やるべき課題をクリアしそれに対する報酬を得るとだけ考えがちですが、それと同時にその貢献が自分自身の生活を向上発展させ、所属する共同体や社会が発展するための貢献となります。
それは自分は成長し進化できるという関係でもああります。
だから、仕事のタスクは、家庭や学業はもちろん共同体・社会全体・宇宙への貢献などの有益な行動すべてを指します。


仕事のタスクでの課題例
- 不登校
- 引きこもりやニート
- 学業やキャリアの進路
- 部下の指導
などが、仕事のタスクでの困った課題となることが多いです。
家庭内での引きこもりは、交友や愛のタスクとも重複するかもしれません。
子が親への対応を義務だと考えれば仕事のタスクとなるでしょう。

ストレスや不安から仕事のタスクを意識的・無意識的に避け始めることで、仕事のタスクが積み上がっていきます。
多くの場合は、精神的な疲労と関係ありそうですが、発端は解決策が見いだせないことがほとんどでしょう。
無意識的に仕事のタスクを避け始めると、不眠症や著しい虚脱感や疲労感に襲われます。それはイライラや無気力感に症状を変えて、周囲の人間との摩擦を引き起こします。
仕事のタスクの課題が、やがて交友のタスクや愛のタスクにまで影響し始めるのです。
子供や親・配偶者の引きこもりの原因を探っていくと、家庭内での問題は根本的なものではなく、家庭内の問題となる前段階にある、学校や職場(家庭外の共同体での問題)での仕事のタスクで大きな課題(劣等感など)を抱えていたということもあります。
交友のタスク
交友は、知人・友人・家族を含めた仕事よりも身近な他者との付き合いを指します。
交友のタスクは、共同体感覚の発達度合いを測るものさしにもなります。
なぜなら、周囲の人間との関係を良好なものへとするか、孤立へ向かうか、協力的な関係を築くか、威圧しあう関係を築くか、相手へ依存するかなど、すべて自分自身で行動を決定するからです。
つまり、より良好な社会的な人間関係を構築するために(仕事のタスクよりも)他人への興味関心や共感が、必要となるからです。
仕事のタスクがうまくいっているのに、交友のタスクがうまくいかないと、「自分の社会的な能力に問題がないので、相手の人格やライフスタイルに問題があるのだろう」と考えがちです。
もちろん、誰とでも仲良くなるということなどできませんから、ライフスタイルの相性などはあるでしょう。
それでも、出会う人間のほとんどとうまくいかないのは、自分自身のライフスタイルに問題を抱えています。
仕事のタスクも交友のタスクもうまく行っていないと、相手への負い目や自分自身への劣等感に支配されて、最後には『素晴らしい孤立』へと自分自身へを導きます。
交友のタスクの悪化が導くもの
- 自分自身への強い劣等感
- 相手へ一方的に責任を押し付ける
- 孤立孤独を良好な交友関係よりも価値のあるものと見なす
良好な交友のタスクに必要なもの
- 他者の興味に関心を持つ
- 自分を偽ったり飾ることなく、ありのままの自分でいる
- 共同体に感謝する
- 共同体に貢献する
愛のタスク
愛のタスクの対象は、恋人(伴侶)・親・子・兄弟姉妹が対象となります。
社会的な立場や収入の多少(仕事のタスク)や人間関係の円滑さ(交友のタスク)に比べると、社会的な立場や生命の維持に最も関係の遠いタスクと言えます。
愛のタスクを回避して生きていくことは容易ですが、誰かと共に生きることで自然と安心でき心が満たされるというような関係からの回避となるでしょう。
誰かと共に生きることは、運命を共同するということです。
本来、自分自身と違う個人である相手と、運命を共同し建設的な方向性で生きていくということは、極端に近い関係で前向きな関係ということです。
極端に近い関係とは、お互いを尊重し必要とし、受け入れあう関係です。
前向きな関係とは、お互いを守り育む関係です。
愛のタスクとは、お互いを尊重し必要とし、受け入れあう関係で、お互いを守り育む関係を構築することを目的とするタスクであると言えます。
良好な愛のタスクに必要なもの
- お互いを尊重する
- お互いを必要とする
- お互いを受け入れ合う
- お互いを守る
- お互いを育む
自己(セルフ)のタスク
自分自身への評価や自分自身の個性の受容、健康面の課題や精神衛生の管理に関するタスクです。
自分自身とどう付き合っていくか、理想と現実、長所と劣等感、リラクゼーションとストレスの開放を目的としています。
バーナード シャルマン(Bernard H. Shulman)とハロルド モサック(Harold H. Mosak )の『Manual For Life Style Assessment』
ハロルド モサック(Harold H. Mosak )の『Early Recollections: Interpretive Method and Application』で紹介されている新しいライフタスクです。
精神世界(スピリチュアル)のタスク
自己のコントロール外である神という存在や宇宙との関係などとの付き合いを通して、自分自身の死生観や世界観と向き合い方に関するタスクです。
考えなくても生きてはいけますが、この世界に生きる以上、自分を包み込む大きな存在との建設的な向き合い方を目的としています。
バーナード シャルマン(Bernard H. Shulman)とハロルド モサック(Harold H. Mosak )の『Manual For Life Style Assessment』
ハロルド モサック(Harold H. Mosak )の『Early Recollections: Interpretive Method and Application』で紹介されている新しいライフタスクです。
ライフタスクとの付き合い方
人生において何らかの行き詰まりや課題を感じた時に、ライフタスクを通して問題を切り分けることが可能となります。
どこに問題を抱えているのか、スムーズな生活・スムーズな目的遂行を実現するためのボトルネックはどこなのか。
すべての課題を一緒くたに考えクリアすることは、難しいし、より多くのストレスの原因となります。
優先すべきタスク・原因と思われるタスクに集中して取り組むためのヒントがライフタスクであると考えたら、アドラー心理学初心者としては正解でしょう。
- 一つのタスクに解決の目処がついたら、次のタスクに集中する。
- ストレスを感じるが、何がストレスなのかわからなくなったら、どのライフタスクなのか分類してみる。
また、タスクがなかなか解決しないと感じた時は、自分自身のライフスタイルに問題があると疑ってみましょう。
※ライフスタイルについて詳しくはこちらをご覧ください。